田熊 八幡宮神事場と南参道口の石碑群

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田熊 八幡宮神事場と南参道口の石碑群(2012.1取材)
 田熊西山集落の南側にある丘陵上の平坦地は、八幡宮の神事場となっている。神事場とは、お御輿のいわゆるお旅所のことである。祭礼のとき、田熊八幡宮を出たお御輿は、左折して西ノ谷集落に入り、南側の神事場参道の坂道をいっきに上って、ここで神事を催した後で、休憩をしている。神事場は、今でこそ片隅に石垣の御輿台を残すのみで、全体が小グランドのようなゲートボール場に様変わりしているが、戦前は、南側の参道と共に松並木の大木に囲まれた草原で、祭礼に多くの幟(のぼり)が立ち並び、神聖さを感じさせられる場所であった。
田熊八幡宮が、あまりにもけわしい坂道を上っていかねばならぬため、足の弱い年寄りや婦人・幼児たちのとって、神事場がお祭りのお参り場所であった。そのため、ここで輿練りなど盛大に神事が行われたことから、大勢の人が集まるようになり、戦前は、出店も数軒構えられるほどに賑わったそうである。

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南側の参道は、今、大木の松が無くなった代わりに桧が植えられており、よく整備され、存続している。
参道入口附近は、旧真加部街道に接している場所であり、ここで注目したいのは、幾つかの石碑があり、祀られていることである。
本来、神社参道に置かれたりする石碑だが、急な坂道の田熊八幡にかわって、街道べりで人目につきやすい神事場の参道が、よりふさわしいとここに寄せられているようである。石碑の幾つかは、西ノ谷と言われるこの辺り住人の先祖に関わるもののようで、言い伝えや関連墓地のある石碑も伺える。石碑の文字は、風化で読み取りがたいが、聞き取りや判読によって、解説をしておきたい。(文:宮澤靖彦 編著 広野の歴史散歩より)