ウタおばあさん奮斗記『山西の民話』
天保五年庚午の年、師走の十五日丑三つ時だった。慌ただしく戸を叩く音に、じいの種右衛門が目を覚まして出て来た。戸をあけると三人組の強盗が押入って来てすぐとっ捕まえられ、次ぎ次ぎに家人をおこして、みんな高手、小手にしばり上げられ、さる口輪をはめられた。家の中をあちこちと探り廻りめぼしい品物をみんな集めた。強盗は三人組であったが外にまだ何人かいるらしい様子だった。衣類や貴重品を出させたが、目ぼしい品物がなかった。蔵をあけて中の品物をとろうと思って、蔵の鍵を出させて蔵をあけようとしたが、この鍵は特殊な鍵で、コザルが五個合わないとあけられない。強盗はあせって誰かこの鍵で蔵をあける奴はいないかと言うた。その時ーウタおばあさんが「妾があけてあげる」といった。強盗はウタおばあさんをほどいて蔵につれていった。