【津山人】時代小説作家 平茂寛氏

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2017年1月29日(日)津山土岐家財団主催「第7回講演会」が行われました。
 講師は時代小説作家の平茂寛氏(佐藤和久)で津山在住です。演題は「時代小説創作の苦労と楽しみ」でした。佐藤さんは岡山県職員として勤務する傍ら、時代小説作家を志し、「隈取絵師・鍬形蕙斎」で朝日時代小説大賞を受賞。作家志望の裏話、創作の苦心、楽しみを語って下さいました。
 、椿高下の武家屋敷の逸見(へんみけ)は、佐藤さんの義父の家です。)

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平茂寛氏のプロフィール(津山在住の時代小説作家)
本名:佐藤和久(59歳)、津山市椿高下に在住。
・1957(昭和32)年 静岡市で生まれる。
・1975(昭和50)年 静岡市立高校卒業
・1979(昭和54)年 東京農工大畜産学部卒業 岡山県職員として就職。農業普及指導員として県内各地で勤務。専門は畜産。
・2007(平成19)年 県職員として働く傍ら、一念発起して時代小説作家を志し、小説執筆に取り組む。
公募の文学賞に再三挑戦。
・2012(平成24)年 4度目の挑戦で長編時代小説「隈取絵師・鍬形蕙斎」により「第3回朝日時代小説大賞」を受賞。朝日新聞出版より「隈取絵師」を刊行。
・2013~2016年 その後、相次いで時代小説を執筆・刊行。地元の公民館や津山市立図書館などにおいて「津山の人物歴史物語」、「ほっこり江戸の湯話」などの演題で講演会を開催。

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著作一覧
・「隈取絵師」(2012、朝日新聞出版)
・「八重の桜」(2013、バンブーコミック・漫画原作)
・「時代劇ファンのための大江戸歴史講座」(2013、晋遊社(共著))
・「暴れ茶人無頼剣」(2013、学研M文庫)
・「悪采師」(2014、朝日新聞出版)
・「とっぱあ与力一年番方筆頭事件帖(一)」(2014、富士見時代小説文庫)
・「とっぱあ与力一年番方筆頭事件帖(二)」(2014、富士見時代小説文庫)
・「ねぼけ医者 月を斬る」(2015、白泉社招き猫文庫)
・「若さま水鏡剣」(2016、コミックス文庫)

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2016年お茶とお花でもてなす津山の秋「美作国 大茶華会」の時の様子


 佐藤さんは本を読まない家庭で育ったので、読書する習慣がなかったそうです。 それなのに、なぜ小説を書くようになったのか?
 佐藤さんは岡山県の職員として畜産農家の技術指導をしていましたが、大きな悩みがありました。間違ったやり方で牛を飼っているのに、何度アドバイスしても、やり方を変えない農業者がいたのです。 そんなとき「どんな人でも具体的な目標ができれば動き出す」という魅力的な話を耳にしました。佐藤さんは農業者に勧める前に、まずは自分を実験台にして、目標を設定したら自身がどう変わるかを確かめてみることにしました。
 佐藤さんは深い考えもなく、単なる思いつきで「小説家になる」と目標を定めました。その日から目標達成のための手順を一歩ずつ進めていくうちに、本当に小説家になれたのだそうです。
 平茂寛のペンネームは、寛平茂(ゆたかひらしげ)という雄の黒毛和牛から名前を拝借しました。畜産の仕事に関わった経歴をペンネームの中に残しておきたかったとのことです。
 はじめは現代ものの小説を書きたくて、小説執筆の手ほどきを受けた師匠にシナリオを送ったのですが、全部ボツ。ところが時代もののシナリオを書いて送ると不思議とOKが出ました。結局、仕方なしに時代小説を書くようになったそうです。 なお、津山には沢山の歴史資料があり、時代小説を執筆するには、とても恵まれた場所だとおっしゃっていました。
 歴史小説と時代小説の違いにも触れました。歴史小説の代表例は司馬遼太郎さんの作品、時代小説の代表は池波正太郎の「鬼平犯科帳」。ともに歴史上の事実を踏まえていますが、事実と事実の合間の埋め方が異なるのだそうです。歴史小説は理論で埋め、時代小説は妄想で埋めるものとか。 また、佐藤さんが時代小説を執筆するときに想定する読者は、還暦を過ぎた男性だそうです。寝る前に酒をチビチビ飲みながら十数ページを読んで寝てしまう。また次の日......という読み方をするので、複雑な筋など翌日には忘れてしまう。そこで時代小説にはキャラクターの強い登場人物づくりが大事だと語られました。
 作品づくりの苦労話では、デビュー作「隈取絵師」の主人公・鍬形蕙斎が絵師だったので、日本画の本を読み込む一方、実際にやってみないと解らないと思って日本画教室に通ったと話されました。なお「隈取」とは、日本画で用いられるぼかしの技法です。
 デビュー後の苦しみについても語ってくれました。順風満帆のはずが、まったく執筆依頼が来ない。二作目を出版するまで一年半もかかったそうです。その間の裏話や出版社とのやり取りについて面白おかしく話して下さいました。
 二作目の主人公は小堀宗中でした。高梁市にある頼久寺の庭を造った小堀遠州の八代目の子孫です。衆楽園も小堀流の作庭師が造ったものでしたね。小堀遠州は庭だけでなく、遠州流茶道の始祖でもあります。宗中は茶道の家元だったので、佐藤さんは執筆に際して遠州流茶道を習い始め、今も続いているそうです。


・隈取絵師......幕府を揺るがす大奥の秘め事を描いた絵の行方は
御抱絵師の鍬方恵斎が松平定信の命で描いた大奥の秘事、ある日その絵が何者かに盗まれてしまう。しかも定信が盗賊として名を挙げたのは想像を絶する人物だった。絵の奪還を命じられた恵斎は争いの渦中に飛び込んで行くが・・・絵画への編執的な愛情が幕閣をも巻き込んだ騒動を引き起こす。 
・暴れ茶人無頼剣......酒と博奕を愛する天衣無縫の茶人若様が江戸の悪党どもをなぎ倒す いざ勝負
・悪采師......400人の博徒を相手に一世一代のいかさま勝負。頼みの綱は、賽子一つ
・とっぱあ与力 年番方筆頭事件帖(一)......度外れた行いの与力が周囲を巻き込み賊を斬る。組織の三番手に位置する年番与力が闇に挑む
・とっぱあ与力 年番方筆頭事件帖(二)......奉行暗殺の予告状にとっぱあ与力が活路を開く
・ねぼけ医者 月を斬る......子供たちのために鬼となれ 小児医者VS尾張の忍者群
・若さま水鏡剣......庶民の世界を知るため将軍世継・徳川家治が湯屋の番台に上がる


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