ミュージカル「不思議世界の榕菴センセイ」

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みんなのミュージカル「不思議世界の榕菴(ようあん)センセイ」は2011年9月18日(日)津山文化センター大ホール18:30分開演、入場料:¥2,000/学生¥1,000〔全席自由〕※無料託児サービスあり


作者のことば 山田美那子
 津山洋学資料館の中庭に宇田川榕菴の石像がある。穏やかな優しい瞳の像である。
 檳便榔樹(びんろうじゅ)の樹の下にあるといいのにといつも思ってしまう。榕菴の「榕」は榕菴の生家に聳えていたびんろうじゅ、ガジュマルの熱帯樹にちなんだ命名である。熱帯樹木だから津山みたいな寒い所では育ちにくいのかもしれない。
 新聞やテレビで榕菴の翻訳した「舎密開宗」に基づき、ボルタ電池作りに挑戦する小学生たちの写真が掲載されていた。
 榕菴ほど本邦初ということばのふさわしい人はいない。珈琲(コーヒー)・トランプ・西洋音楽・楽器の研究・植物学・物理学・百を越える化学記号の名付け親。
 どれを取り上げても榕菴は天才的なひらめきをほしいままにするマルチな人物である。
 津山藩に医師として仕え、コレラや天然痘の伝染予防に心を尽くした人の生涯を津山に住む私たちは大切に記憶したい。
 時代の暗闇をひたすら拓き、ひたすら生き抜いたわが津山藩の洋学者群像はわれらの誇りである。
 宇宙の暗闇をゆく「ハヤブサ」と重なる、榕菴の心意気を津山の子どもたちにしっかりおぼえてもらいたい。
 「なでしこジャパン」も「ハヤブサ」も決してあきらめなかった。
 キミもやればできるはず。「できない」なんて情けないことを言うな!!

 

蘭学者である江沢養樹は、わが子・重次郎の優れた才能を伸ばすため、重次郎に自らが尊敬する宇田川玄眞の養子になるように進める。嫌がる重次郎は、養子縁組の話を玄眞の方から断ってもらおうと、一人、玄眞を訪ねる。ところが、玄眞から逆にたいそう気に入られ、ついには養子になり、宇田川榕菴を名乗るようになる。
 江戸・浅草。榕菴は、友人の箕作阮甫、緒方洪庵とつるみ、多岐にわたる論議をかわす。珈琲のこと、植物のこと、宗教のこと、音楽のこと…。ある時、榕菴は彼らに婚約者の足立セヨを紹介する。セヨは、榕菴が模写したオランダカルタの話をする。「榕菴の描いたオランダカルタの兵隊たちが夜になったら行進するんだって…」。舞台は一転、トランプの兵隊たちがにぎやかに繰り出し、榕菴たちを驚かす。
 この頃、巷ではコレラが大流行。め組の頭が血相を変えて、玄眞邸に飛び込んでくる。玄眞は榕菴を伴い、早速出かける。そのころの鎖国の日本にあって、外国の有効な薬は手に入らないのだ。
 スィートな新婚生活を送る榕菴とセヨ。ところが、江戸の大火事に巻き込まれる。命からがら難を逃れる二人だが、榕菴の13年半かけた百科事典の翻訳本を灰にしてしまい、落ち込むセヨ。励ます榕菴。「いいよ、いいよ。お前が生きているだけで充分なんだ」。
 やがて榕菴は、津山へ。子どもたちと薬用植物を採取しながら、のんびりと教えていたが、江戸の方では洋学排除の動きあり、とニュースが飛び込み、榕菴は心痛める……。

(文、写真提供:津山国際総合音楽祭委員会)