板井原伝統的建造物群保存地区(智頭町)

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 県選定伝統的建造物群保存地区・板井原伝統的建造物群保存地区・選定年月日 平成16年2月3日
 当保存地区は、板井原川の谷間に沿って形成された小集落で、集落の成立は十五世紀末に遡ると考えられている。集落における主な生業は、水稲耕作や焼畑であるが、耕地が少なく、江戸時代以来、炭焼き、養蚕、杉樽材の産出などが行われた。
 集落は板井原川平行して走る六尺道に沿って、塀を用いずに建物が密集している。集落内の百十棟あまりの建物のうち住宅二十三棟は江戸時代から昭和初期までに建てられたもので、それ以外も、多くは養蚕が行われていた昭和四十年以前のものである。江戸時代から明治期に建てられた建物の多くは茅葺きであったが、養蚕が盛んになった大正以降は杉皮葺の二階建てが中心となり、これらは昭和に入り、鉄板葺きに変えられた。別棟で養蚕場を建てる家や、主屋を改築して養蚕場を二階に設ける家もあった。近代になって養蚕に活路を見出した集落の歴史を色濃く反映するとともに、当集落の固有の建築的特色となっている。また、主屋の特徴として、建物正面に杉の大材を用いた縁桁が見られ、杉の産地としての特性が現れている。
 集落内に自動車が入らないこともあり、県内でも珍しくなった山村集落の形態をよく保持している。当保存地区は、農林業を生活基盤とする山間部の集落であり、集落周辺の山林、谷、川、耕地にいたる生業形態に対応した伝統的建造物が密度髙く残り、周囲の自然環境と一体となってすぐれた文化的景観を形成しており、価値が高い。平成19年3月 鳥取県教育委員会(現地看板より)

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集落の立地
 板井原集落は、智頭町中心地から北東約3㎞の山間部に位置しています。智頭町中心地と板井原集落とを行き来するには、尾根を越える峠道を徒歩で越え、六尺道から集落に入るか、自動車で県道八頭中央線を行き、山腹を抜ける板井原トンネルを通って行く道があります。路線バス、鉄道など公共交通はありません。

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板井原集落(伝統的建造物群保存地区) 
 板井原集落は、周囲の山々の中にすっぽりと沈み込んでいるのが特徴であり、昭和30年代の山村集落にタイムスリップしたような気分が味わえます。

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 集落の始まりは平安時代にさかのぼり、平家落人の隠れ里であったとする説や木地師集団が定着したともいわれています。現存する茅葺住宅などの建造物から、今日失われつつある山里の原風景が見て取れる、全国的にも数少ない山村集落です。大部分の建物が、50年以上経過しており、中には約300年経過した建物も残っています。

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集落内の建物
 集落内の建物はおおよそ110棟で、ほとんどが築50年以上を経た建物です。茅葺屋根の家は1棟ですが、そのほか主屋、土蔵も伝統的な手法で建築されています。また、付属屋などがよく残っており、昭和30年代の山村集落の姿を今に色濃く伝えています。

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農山村を感じる要素
 昭和30年代を基調とした、農山村としての集落環境が強く残っています。ところどころ見られる田んぼ、畑、作業小屋をはじめ、あぜに建てられたハゼとそこに掛けられる稲や大根などはそれをよく伝えています。
 そこには板井原集落特有のものもあれば、全国各地にいろいろなところで見られるものもあります。それらが混然一体となって農山村集落「板井原」の魅力を創出しています。

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板井原ふるさと館

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喫茶「歩とり」火・水定休11時~17時まで。その他臨時休業、冬季休業有。

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 畑仕事などの人の気配以上に、農耕機具やザル・ムシロ・タルなど一昔前の民具が集落内に満ちており板井原に暮らす人たちにも、訪れた観光客にも何か"ほっとしたもの"を与えてくれます。これが暮らしの気配であり、板井原集落が生きている証といえます。

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六尺道 
 集落の中央を大きく曲がりながら、ほぼ板井原川に沿って幅員6尺(2m弱)ほどの道路が東北東から西南西に通っています。この狭い道路が、昔から村内の主要な道路です。

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自然を感じる要素
 板井原は、山や谷、川などの地形、動植物など多彩な自然環境の中にあります。これらは単に周辺環境として存在するのではなく、板井原での暮らしに欠かせない素材であり、様々な恵みをもたらしています。

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向山神社 
 本殿は、一間社流造で覆殿のなかにあります。石造の亀腹状の礎石に文化8年(1811)の刻銘があり、本殿は、明治6年の建築で各所に彫刻が施されています。

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暮らしの気配を感じる要素
 板井原集落は、かつて20数戸を数えたこともありますが、現在冬を越して通年板井原で生活している家はわずかとなっています。春になると通い農業の住民が加わって、板井原集落は賑やかさを増していきます。

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(文:板井原集落案内パンフレットより)(2018年4月28日撮影)