横仙歌舞伎(岡山県重要無形民族文化財)

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横仙歌舞伎(よこせんかぶき) 横仙とは、奈義町の辺りを指す古い地名で「山の横」という意味。
 那岐山の辺りは古くから横仙地方とよばれ、江戸時代末期(今から約200年前)から盛んに農村の楽しみとして地下芝居(地元の人々が行った素人芝居)が演じられてきました。兵庫県の播州歌舞伎などを地方の人々がまねてはじめたとされています。そして、源義経伝説を題材とした「義経千本桜」など多くの芝居が上演されました。地元の振付師の指導のもと、囃子、義太夫、役者も地元の保存会で担当し、芸を磨くとともに、県内外への出張公演や、こども歌舞伎教室などの後継者の育成にも積極的に取り組んでいます。(文:『守ろう地域の宝!民族芸能~美作編~』より)(平成31年4月29日撮影)

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横仙歌舞伎四季の公演「春」松神神社歌舞伎舞台公演
平成31年4月29日(月) 13:00開演 松神神社歌舞伎舞台(昭和38年岡山県指定重文)

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受付の所に写真が展示してありました。

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菅原伝授手習鑑吉田社車曳 こども歌舞伎教室 (雨模様だったのでテントが張られています。)
 時代は平安時代、醍醐帝のころ、事件の発端は、左大臣藤原時平(ときひらの音読み、藤原時平のこと)が、右大臣菅宰相(菅原道真のこと)に謀反の罪をきせて九州の大宰府に左遷させました。「しへい」は悪い人「しょうじょう」は慕う人やお弟子さんもたくさんいる良い人です。
 そして、このお芝居の主人公は梅王丸、松王丸、桜丸三つ子です。えらい人の舎人(とねり)として働いています。舎人とは牛車(ぎっしゃ)を引く牛の世話をし、えらい人の移動の安全を守る大切な役目で、今で言うと専属運転手兼ボディーガードのようなものです。三人はぞれぞれ別の主人に仕えたため、この事件に巻き込まれてしまいます。

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最初、深編笠を被って登場するのは、菅宰相に仕えた梅王丸と斎世親王に仕えた桜丸は主を失い憤懣やるかたない様子です。

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そこに、時平の牛車がとおりかかる聞き、一言いってやろう駆けよると取り巻きを蹴散らし大暴れします。「待て!」と留めたのは松王丸です。

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菅原伝授手習鑑吉田社車曳(すがはらでんじゅてならいかがみよしだしゃくるまびき)

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そして兄弟げんかになり(喧嘩しているようには見えない)時平の牛車をゆすりあげバラバラに壊してしまいます。

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現れた時平は歌舞伎界で最高ランクの悪役で、あまりの貫録に梅王丸も桜丸も手も足も出ません。

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最後はまたケンカになりますが、決着は付きません。そのままみんなで「ひっぱりの見栄」で幕になります。歌舞伎界のスーパーヒーロー梅王丸、松王丸、桜丸のそれぞれの個性がよくわかる見どころたくさんの一幕です。

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義経千本桜 吉野山道行の段 中島東松神座
 歌舞伎の世界で「菅原伝授手習鑑」「仮名手本忠臣蔵」と並び「三大狂言」と言われる人気の題材です。壇ノ浦で平家を滅ばした義経ですが、異母兄弟の頼朝からうとまれると、追手がかかり逃げ落ちてゆきます。「道行」とは、男女の旅の様子を描いた場面で、この作品では、主従関係にある静と佐藤忠信が吉野山から義経がかくまわれている川連法眼の館へと向かう様子を脚色しています。 
舞台は大和国吉野山、千本桜として名高い名所です。忠信と静御前による華やかな踊りに続き、忠信が屋島の合戦の様を勇壮に描く部分が見どころです。やってきたのは、義経の恋人「静」です。遅れてきたのは義経の家臣佐藤忠信、満開の桜を前に、二人は義経からもらった形見をみせあい、興に乗って踊り出します。
しかし、忠信は屋島の合戦で兄の佐藤継信が義経をかばい代わりに矢を受けて落命したシーンになると涙をこぼすのでした。
この忠信は、400年生きた妖狐の子どもで、静が持っている「初音の鼓」にはその親狐の皮が張ってあり、親を慕い、鼓を取り返すために忠信になりすまし付き従っているのでした。そこに同じく、初音の鼓を狙う、頼朝からの早見藤太が現れますが、忠信は狐の妖力で追い払うのです。満開の桜に彩られた吉野山を背景にした華やかな舞踊劇をお楽しみください。(文:会場で配られた解説より)