蒜山の正月飾り・おせち
蒜山の正月飾り
蒜山地域の正月飾りは大変豪華である。近年、簡略化されたものが多くなった。なぜここまで豪華にするのか。長く厳しい冬を越え、早く春の芽吹きを迎えて、新しい生産活動を始めようとする人々の強い期待がそこに表れている。俵の上には鏡餅。背後には「歳徳神」を祀る。周囲には餅花を飾り、いかにも春が到来したかのような演出。正面上部にはフグリと呼ばれる飾り。男性器を象徴したもので、子孫繁栄を示す。スダレと呼ばれる12枚の板は、12ヶ月を指す。旧暦の時代、閏月がある年には13枚を掲げた。年桶は岡山県北で広く見られるもので、この中に供え物などを入れる。来るべき春への強い思い、五穀豊穣や子孫繁栄といった祈りを細部にまで凝縮させているのが、蒜山の正月飾りの特徴である。(文:蒜山郷土博物館説明文より転載)(2023年9月7日撮影)
蒜山の正月飾り おせち料理
おせち料理
山間部に位置する蒜山地域では鮮魚は持ち込みにくい。その代わり、厳冬期になるとかえって腐りにくいため魚は持ち込みやすくなる。蒜山のおせち料理に海の魚が加わっているのはそのためである。
米菓子の木枠など おせち料理
金花糖(きんかとう)山間部に位置し、鉄道などの輸送網が発達していない蒜山地域では、かつては海の魚を入手することは容易ではなかった。車や鉄道がない時代、鮮魚を持ち込むことはできない。婚礼などの祝いの席に付きものの鯛も調達できない。そこで蒜山の人々は、鯛の代用品として、砂糖水を鯛の木型に入れて固めた砂糖菓子を作ったのである。困難な条件を逆手に取り、新しい文化を生み出した蒜山地域の人々の知恵である。
蒜山の雑煮 うの花の五目雑煮
白みそ雑煮 すまし雑煮
長く雪に閉ざされる蒜山地域では、保存食としての餅が重宝された。しかし、餅ばかり食べているとどうしても飽きる。そこで味付けや料理方法を変えて、目先や舌先に変化をもたらせようとした。かつては、一軒の家でも、毎日異なる味付けをして、餅料理を飽きないように長く食べさせる工夫がされた。蒜山の郷土料理で雑煮が発達している背景には、冬の食生活を少しでも改善し、豊かなものにしようとする知恵があった。
しるこ雑煮 鰤入り雑煮
供え物
ことぜん 藁づと
こと(事納め)
3月初めの巳、丑の日など吉日を選ぶ、1人ごとはよくないと近隣話し合って行う。赤飯、肴、煮〆、ナマスなどをつくり、柳のスワイ(徒長枝)で作った箸と共に神様に供え、家内中同じものをいただく。神供えのご馳走はワラヅトに入れ、全員の箸をスダレ様に編んだツトを添えて、高い木の枝に吊し、鳥が食べるのを吉とする。
蒜山の正月飾り
フグリ・スダレ テッチリコ(蒜山の伝統工芸)
テッチリコ
テッチラコ、嫁の尻叩きとも、どんど焼きの際に子どもが持ち、集落に新しく嫁いできた女性を追いかけて、尻を叩く。女性側が灰を持って、子どもたちに対抗する地域もある。テッチリコはワラで出来ており軽量であるが、力を入れて叩くとそれなりに痛いため、力の弱い幼い子どもたちが行う。