知恵を願う文殊菩薩(山形)

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知恵を願う文殊菩薩 筆などを供え素朴さ残す
  勝北町山形の字寺尾、八幡神社の上り道のかたわらに、石造りの「文殊菩薩」と彫った文字塔が、ひっそりと立っている。
 石塔の高さ七〇cm、表面の下方に蓮華を彫り、その上の中央に「文殊菩薩」右方に「文政七年」「世話人忠蔵」左方に「申八月日」「其外連中」と刻銘されている。文政七年といえば、今から一六七年前、世話人忠蔵を中心として、文殊信仰に篤いこの付近の人びとによって、建立されたものであろう。

 文殊菩薩は、智恵をつかさどり、智恵のすぐれた菩薩であって、普賢菩薩とともに、釈迦如来の脇士である。この菩薩は、唐獅子に乗り、右手に智剣をもち、左手に経巻を持つのが一般的な姿であるが、唐獅子を配した蓮華座に坐っているものもあり、方形の台座に腰を掛け、片足を下にしたものもある。
 「三人寄れば文殊の智恵」ということわざがある。文殊の智恵は、常人の三人前にすぎないということではない。その智恵たるや無私公正な判断であり、広大無辺、われわれの到底及ぶところではないといわれ、そのような智恵の一端でも授かることを切に願って、この石塔を建てられたものと思われる。
 地蔵菩薩や不動明王の尊像、大日如来の文字塔は、わたくしたちの周りには、数多く見掛けるが、文殊菩薩が祀られているのは、この地方としては珍しい。
 いまも、時折、塔の前に筆などが供えられ、絶えることなく素朴な祈りが続けられている。
(勝北町文化財保護委員長・寺坂卓郎記)(『平成5年発行:勝北風の里探訪』より)

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少し細い道を入る                案内くださった内田昭吉さんです。

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文殊菩薩

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附近の景色です。(2018年10月6日撮影)


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