田熊 雨乞いが行われた山頂の竜王様
田熊分広戸川の東側に小字大町・下木集落があるが、その東側山地の山頂部に龍王様が祀られている。木山様の近くと聞いて訪れたが、海抜200mほどの山頂部は、平坦地ではあるが樹木が茂って道もふさがっており、案内なしには、たどりつけない状況であった。
地元の婦人でさえ、話は聞いているが、お参りしたこともなく道は知らないと疎遠な様子であった。今や存在がうすれかけているが、かつて龍王様は、農民にとって水田の用水の確保のために欠かせない天の雨をつかさどる大切な神様であった。天候不順でとりわけ田植え時期や夏分に何日も雨が降らない干天が続くと、熱心に龍王様を拝み、やぐらを組んで大火を焚くいわゆる千駄焚き(せんだたき)をして雨乞いを行った。水源の浅い広戸川は、干天続きには水涸れを起こしやすいことから、龍王さまを祀る必要があったと考えられる。
2012年9月9日取材(文:広野の歴史散歩 宮澤靖彦編著より)