樹齢三百年の紅梅 美しさめでる参詣者

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勝北町が文化財に指定し長く保存している天然記念物部門の中に同町大吉の真言宗・五穀寺の紅梅(平成二年五月二十八日指定)があります。
 この紅梅は、寺の山門を入った左側にあり、根元の周囲は二・六m、地上一mのところで二つの枝に分かれ、南の枝が一・三m、北の枝が一・六m、高さは五mあり、樹齢は三百年(元禄時代、一六九〇年ごろ)と推定される老樹。
 寺の伝えによれば、今からおよそ二百二十年前の享保年間に、五穀寺は火災にあったといわれ、紅梅の樹齢からみて、この大火を凌いだ記念の木ともいえる。

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 毎年、早春の頃、静かなたたずまいの境内では枝いっぱいに開花した紅梅が美しく、訪れる人々の目を見はらせる。
 また、昭和五十年に行われた岡山県文化財総合調査で、五穀寺の紅梅は、県内二番目に挙げられる老樹で井原市西江原町にある「興譲館の紅梅」と並ぶ名木であると報告されている。

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 梅の原産地は、中国の四川省、湖北省の山岳地帯といわれており、中国の梅が七世紀ごろ九州に渡来したともいわれるが、古事記や日本書紀には、梅について記載されていないので、わが国で植えられたのは、八世紀の初めと伝えられているようです。

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 初春にさきだって、香り高く咲く梅の花は、古くから人々に愛されてきたのですが、日本で最も古い歌集の万葉集には、約四千五百首の歌が収められています。そのうち千五百首に植物が歌い込められているなかで、梅は三番目に多く約百十九首に詠まれています。

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 勝北町の文化財で天然記念物に指定されているのはエノキ(西村)金剛寺(西上)の銀モクセイとつばき、広戸神社境内の大杉、朝吉神社(上村)のツクバネガシ、新善光寺のサルスベリ、西賀茂神社(杉宮)のナナミノキなどがあり、五穀寺の紅梅を加えて八件になりました。

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 それぞれの樹木の花の咲くころ、実の熟れるとき、四季おりおりの姿を観察いただくとともに、長い年月勝北の自然と人々に、守り育てられたこれらの天然記念物を大切に後世に遺していくよう、努めていきたいものです。

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境内の梅の木

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小楼門手前の梅の木

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シキザクラ(文:『勝北版マイタウン かつた記録集』平成4年3月記事より)(2019年3月25日撮影)