宇田川榕菴と『舎密開宗』の"すごさ"

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「実感!体感!舎密開宗」(せいみかいそう)-現代化学者が語る宇田川榕菴のすごいところ-
 平成27年2月22日(日)午後1時30分~3時から津山洋学資料館GENPOホールで講師に津山工業高等専門学校 准教授 廣木一亮 先生(導電性高分子の研究で工学博士を取得。元・未来館の科学コミュニケーター兼理化学研究所客員研究員。)をお迎えし、化学者の視点から、宇田川榕菴と『舎密開宗』の"すごさ"を、当時の時代背景を交えながらお話しくださいました。

 廣木先生が小学生の頃、「たのしい化学」の中に『舎密開宗』が載っていたのだそうです。家に化学実験室をもつほどの化学好き。ノーベル賞を受賞された白川英樹先生の最後の弟子で、白川先生と今でもメールでやりとりしているそうです。

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「玄随、玄真はお医者さんだが、榕菴はサイエンシスト(科学者)だ。キャパのすごさを感じる。」と絶賛!


 今でも使われている「酸素」「窒素」「炭素」「水素」といった元素の名前や「酸化」「還元」といった化学反応を表す言葉は、このとき榕菴によって造られました。


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 現代の科学者からも、津山と聞けば=『舎密開宗』と言われるそうです。

 先生が小学生の頃していた実験と言えば、いつも基礎的な実験だった。とにかく再発見することが楽しくてならなかったそうで、「子どもがやりたいことを、やりたいようにやらせてくれた。親に感謝しています。」また、来るべきして来た津山の地だとのことでした。

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榕菴は自分で他の本を読み比べて、自分の考えで本を書いた。
 元々はイギリスの本だったが、オランダで刷ったからオランダ語になっていただけで、それを日本語にした。なんと化学遺産第一号が『舎密開宗』だった。

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廣木先生は、歴史が好きだったのが幸いして「科学史」を読み解くには有利だったとのこと。

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オランダはヨーロッパの出版物が集まってくるところ、また、清は文学的、科学的に優れていたところで、日本はオランダと清と交流したのはラッキーだった。

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「舎密」とはラテン語系のオランダ語「セーミ」に当て字をしたもので、セーミとは英語でいうケミストリー、つまり化学のことだそうです。

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当時は元素分解の記号はなかった時代に正確に文字で元素を表しているのがすごい。

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本の中でイメージすることは楽しいが、実際にやってみないとわからない。

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アルカリの実験!
青い、スミレの汁は酸に遭うと赤くなる。アルカリに遭うと緑になる。色止めするのに塩を入れると書いてある。ブドウの巨峰を食べると舌が赤くなる。歯を磨くと青くなる。(アルカリだから)

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津山が小さな藩なのに教育熱心だったから、偉大な医者を多く輩出したのだろう。
榕菴は江戸詰めの藩医で主に江戸で実験をやっていた。実験に必要なガラス等は長崎から仕入れていた。江戸だから出来たこと。地理的優位があったからこそ出来たことである。化学は野蛮学だったけど、牢屋に入れられなかったのは地位と役割を与えられていたからだそうです。

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青と青がくっつくと電気は消える?水素の方の気泡が大きい。など、津山の子供は観察力が素晴らしいとのことでした。


余談

・蘭引きを(純粋なものを使う基本の化学)利用していたのはアラビアの人。バラの香りを作るために作ったものが蘭引き。

・コーヒーの文字には王が付いているのは、王妃の首飾りに似ていたかららしい。