猿神社 (津山市一宮)

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 美作の国一宮(津山市一宮)に、中山神社というお宮がある。今は、牛の神さまとしてうやまわれているが、むかし、この神社のご神体は、サルであったといわれている。
猿神社(さるじんじゃ)今昔物語二六巻にみえる「中山の猿」の霊を祀るとされ、現在、猿田彦神として祀られる。牛馬の安産守護の神として信仰を受け、今も尚、ぬいぐるみの小猿を奉納する風習が残る。

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 猿神社というのが中山神社の奥にあるんですよ。それで、中山神社のそばに、お爺さんとお婆さんがおって、そしてかわいい娘がおったわけです。
 ある日、筋肉隆々のたくましい若い青年が、そこへ偶然来たわけです。その青年が聞くのに、
「自分の娘をおそろしい猿軍団のところへ生贄にせにゃあならん。せえで泣いているんだ」と。それを聞いた若者が、それじゃあというので、お爺さんとお婆さんに話をするわけです。
「計略がある。私がなんとかしましょう」と。きれいな娘じゃから、何とか助けたいと。せえで、それから日にちが十日に決まっとった。実は自分が娘だということにして、長持の中に自分を入れてくれえ。蓋をしてえてくれえと。担いで連れて行くわけです。

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 そうとも知らずに大猿小猿が酒盛りをして祝いをするわけです。酒を飲んで、
「いよいよ娘を見ようじゃないか、今日は目出てえ」といって蓋を開けるんですね。開けてびっくりですなあ。若者が踊り出て、せえで小猿をやっつけてしまうわけです。そうしてしまいに大猿ですね、親分を押さえつけて、「刀で首を切るぞ」と言うたら、その猿が言うのに、「大変悪いことをしました。これからは絶対しませんから。そのかわり、土地のために、一宮のみんなのために尽くしますから、貢献しますから」というふうに言うんですね。そしたらその若者が、「それは絶対じゃな」と約束させて、首を切らなかったわけです。


 それから後は一宮の人は、田んぼもよくできるし、まあ年々豊作で栄えていったという。それからしばらくしてですね、ありがたいことだと、村人が猿神社をこしらえるわけです。そこへ行ったら、そこは猿神社に拝みに行った人が、猿の縫いぐるみをこしらえて持って行って、それを祠の長押みたいなところへ置いて豊作を祈る。また、お産のこともあるんですよ。安産だったらそこへ猿の縫いぐるみを持っていく。現在でもいっぱいあります。(発行:津山市、執筆者:立石憲利、新修津山市史 別巻『つやまの民話』より転載)

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(2019年1月19日撮影)