備中櫓(鶴山公園内)

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備中櫓は天守台の南東、本丸南面に突出した石垣上に立地する2階建ての櫓です。
 高さ約13メートル、幅約24メートル、奥行き約8メートルで、延べ面積は約288平方メートルです。
60を数える津山城の櫓の中でも最大級の規模を誇り、その立地などから考えて、天守に次いで重要な櫓であり、象徴性の高い建物であるといえます。
構造
 備中櫓は、木造一部2階建てで屋根は本瓦葺きの入母屋造り、外壁は軒廻りも含めて白漆喰塗りです。通常、櫓の内部は板敷きあるいは土間ですが、この備中櫓の内部は全室畳敷きという特徴を持っています。

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 1階には「クゞリ」を備え付けた本格的な「御茶席」や、「御床」「違棚」を備える「御座之間」が存在し、2階には「御上段」を設けるなど格式の高い空間になっています。
 また、本丸御殿と廊下でつながれており、津山城本丸御殿の一部として機能していました。このような内部仕様や本丸御殿とのつながりなどから考えて、藩主やその身近な人のプライベートな生活空間であったと考えられます。
 つまり、備中櫓は城外から見ると通常の櫓でありながら、内部には居間を設けるというきわめて異例な建物でした。このような櫓は全国的にも類例が少なく、津山城を特徴づける建物として復元の対象に選ばれました。

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名前の由来
 津山城は美作国にありながら、備中櫓とは不思議な命名です。
 この「備中櫓」という名称ですが、森藩時代の基本的な史料である『森家先代実録』によると「備中矢倉 池田備中守長幸入来之節出来」とあります。櫓の名称は、この「池田備中守長幸」に起因するといわれています。
 池田長幸(ながよし)には初代津山藩主・森忠政の娘が二人嫁いでおり、忠政にとって長幸は娘婿にあたる人物です。

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 長幸は、天正15年(1587)生まれ。慶長19年(1614)に父長吉の跡を継いで鳥取城主・6万石の大名となります。元和元年(1615)に従五位下備中守に叙任され、同3年に鳥取から備中国松山城(岡山県高梁市)に移りました。
 津山城の工事は元和2年に終了したといわれているので、「池田備中守長幸」が津山を訪れたのは、元和元年から2年にかけてと考えられ、そのころ備中櫓が完成したということになります。
 長幸に最初に嫁いだのは、忠政の長女・於松でした。於松は、津山から鳥取に嫁いで、慶長16年(1611)には長常を産んでいます。しかし、その2年後、23歳の若さで病死したため、その継室として忠政の四女・於宮が長幸に嫁いでいます。

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 話は少しそれますが、忠政と池田輝政はそれぞれ摂津茨木城主・中川清秀の娘を妻に迎えており、二人はいわゆる「相婿」でした。また、忠政の兄・森長可の妻は池田恒興の娘であり、忠政の五女・於兼は池田忠継に嫁ぐなど、森家と池田家は深い縁戚関係にありました。
 平成10年の発掘調査時に備中櫓跡付近から池田家の家紋である「揚羽蝶」が刻まれている瓦が出土したことも、この建物が池田家と深い関係にあったことを物語っています。

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※詳しくは『津山"来んちゃい"観光Net』で!(文:『津山"来んちゃい"観光Net』より抜粋)

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                        鶴山館内の展示風景
 備中櫓は本丸御殿の南西端に位置し、その名は鳥取城主池田備中守長幸に由来すると伝えられる。森藩時代の基本的な資料である『森家先代実録』には「備中矢倉 池田備中守長幸入来の節出来」とある。森忠政は長女於松を池田備中守長幸に嫁がせており、長幸は忠政の娘婿にあたる。その長幸が津山城を訪れるのを機に完成したのが備中櫓であったと考えられている。備中櫓跡の発掘調査で池田家の揚羽蝶紋の瓦が出土したことも、この建物が池田家と深い関係にあったことを物語っている。
 備中櫓の外観は漆喰仕上げで通常の櫓と同様だが、本丸御殿指図には備中櫓がその東に接続する長局・到来櫓とともに描かれており、これらの建物が御殿の一部として認識されていたことを示している。さらに指図によると内部には御座之間や茶室を備え、建具には「唐紙」を用いるなど、内部は完全に御殿建築であり、なおかつ繊細で女性的な仕上げであったことがわかる。そのためこの櫓は、本丸御殿の最奥部という位置からしても、城主にごく近い間柄の女性もしくは城主自身の生活空間の一部として用いられたと考えられている。
 このような特異な構造を持つ櫓は類例が少なく、津山城の建物の中でも特徴的なものであるため、復元整備の対象となったものである。 (文:津山城内の案内板より抜粋)

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鶴山館内の展示風景(嘗ての天守の様子)

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津山城(鶴山公園)案内板より抜粋

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津山城(鶴山公園)案内板より抜粋

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津山城(鶴山公園)案内板より抜粋        鶴山館内の展示風景

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バーチャル天守閣                触ると幸せになると言うハートの石垣

(2017年6月14日・6月21日・7月14日・2012年4月19日撮影)